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経営についての考えや思い〜フローラ平山様 その9〜

By 北浦 令偉, 公開日 2022-01-01T03:00:00.000Z

経営についての考えや思い

今、平山さんの所では、8割5部が地元のお客様に提供され、この9年間で徐々に売り上げは伸び、欠品が出てしまったり、噂を聞きつけた各地のお店から新たな問い合わせが来るほどの売れ行きなんだそうだ。しかし、平山さんは「どんどん売り上げを伸ばそう」とか「儲けよう」と言う考えにはならないそうです。量販店に慣れてしまっている感覚をグイッと引き戻された感じがしました。お客様の心を動かす花を一生懸命作り、お客様が「いい」と思ったものにお金を払い、それが収入になる。作る側・売る側・買う側、みんなの笑顔が見えた気がしました。

 

 

(平山さん)

経営的な話をすると、私は後付けの考え方です。自分が作りたい花の形があって、自分が作り出したい、世に出したい商品の形があって、その商品の形をお客様に認知してもらって、お客様が買ってくれて、それが結果的に経営が良くなる状態に結びつけばいいなって思うんです。まずは良い商品を作り出して、それを「いい」と言ってくれるお客様がいる。経営は後からついてくればいいなっていう、後付けの感覚で今は考えています。

 

ただ、経営状態の良し悪しは、この鹿島台っていう地域にも影響を与えるし、従業員さんの生活にも影響を与えるので、いい加減にはできないとは思っていますけどね、感覚的には後付けなんです。たくさん儲けようとか、たくさん売り上げを上げようとかは考えていなくて、「人」と「お金」と「もの」がうまく回ってくれればいいなっていう。経営の細かい中身に執着する気はないです。

 

経営の話は、某ホームセンターでバイヤーをしていた時に色々勉強してきましたが、仕事柄あちこち回って見てて、「世の中、だんだん心が動かされるような花っていうのを、あんまり目にしなくなってきたな」って感じるようになってきて、「これが続いていったら花業界が衰退するんじゃないの?」って危機感が、当時あったんです。「花を飾るって、そういうことじゃないよね?!」「安く売ればいいってことじゃないよね?!」って思うところがすごくあって。しかし、量販店でいい花を売るっていうことは、自分1人の判断でできることじゃない、会社の方針があるから、ほぼできないことだと分かっていました。「どうにかしたい」って考えた時、「自分の実家は生産者をやっている。生産の現場に戻って、原点に戻って、世の中にいい花を提供して、キチッとお客様に喜んでもらって、かつ経営もそれでうまく回っている状態っていうものを目指せないかな・・・」って漠然と思ったのがきっかけかもしれないですね。

 

元々、実家が花農家であるという基盤がありましたし、その上、父は全国でも名前が知られている高い技術の持ち主なので。父の技術を上手く生かしながら、いかに「安値競争の流れになってしまっている今の花業界に一石を投じるか」っていうところですよね。安値競争が全て悪いというわけではないんです。量販店は、花の消費拡大には貢献してきたんでしょうけど、「その流れとは別の流れが必要なんじゃないかな?」って思ったんです。

 

花業界に限らず、日本全体が安値競争の渦に飲まれてしまっていると思うんです。例えば、日本の家電業界が衰退しているのも、同じなのだと思います。「なぜ日本の製品が値段が高くても世界中で売れたのか?」それは日本に高い技術力があったからだと思うんですよ。それを忘れてしまっているんじゃないかな?と、最近の家電を見てても思います。「ものをいっぱい売りたい」まずそこに頭が行ってしまうと、「どうやって安く部品を仕入れて、どうやって安く組み立て、どうやって安く供給するか?」って考えちゃうんで、安く買いたいという客層をシェア争いしちゃうじゃないですか。そこに頭を突っ込んじゃうと、なかなか抜け出せないですよね。

 

経営について、正しさを追求すると、正しさって無くて、10年後20年後になった時にちゃんと経営できていれば正しかったんだなってことだと思うんです。うちで働いてくれる授業員さんがいて、うちの花を買ってくださるお客様がいて、従業員さんに人並み以上のお給料が払えて、っていうのを小さくてもキチッと回せている状態が20年後30年後にできていれば合格なんじゃないのって思うんですよね。

 

なので、「価格競争はしない」、「長く持つとか綺麗な花だとか、そういうニーズに対してキチッと物を供給する」ということだけはブレないようにやらなきゃないなって、絞り込みをしています。そこは絶対ブレたらいけないなっていう、そこが基本のきっていうか、根っこの部分っていうか…。

 

今のところ、思っていた通りの形になっているので、今後は時代の流れというか、ニーズを見ながら、常にマイナーチェンジを繰り返しながら進めて行くっていう形ですね。

 

私がサラリーマンをしていた時に、今は一線を退いちゃったんですけど、カインズを創業した土屋嘉雄さんっていう方がよく「安いものが売れるんじゃ無くて、売れるものが安いんだ。」って、よくおっしゃていたんですよ。「キチッと価値のある物に価値のある値段をつければ、売れるものになるんだ。それが本当に安いものなんだ。」と。カインズさんは「安く売ってます!」って宣伝はしてますけど、お客様から支持されている理由は、原点を忘れていないからなんじゃないかな?って思います。値段じゃなくて、お客様という原点を見て商品開発をしているからなんだなって思うんです。

 

「安い」という以外の価値で結びついた消費っていうのは、そうそう離れないんですよね。値段で結びついている消費の形っていうのは、他に安いものが出てきたら、パッと浮気されちゃうんですよ。どこの業種でも、どこの業界でも起きていることで、価格を追求すると、会社を大きくすることは一瞬で簡単にできるんですけど、長く継続していくってなると難しいと思うんです。何がお客様の心を掴むのかと言ったら、値段しか魅力のない会社は正直苦しいんですよね。うちにしかできないことを追求していかないと、長く地域に根っこを張って何十年って続けていくってことを考えると、値段じゃなくて、うちにしかできない形を追求していきたいなと思うんです。

 

まあ、それも父の技術があってこそなんですけどね。技術が無いと、こういう花束とか作れないんで、技術がなければ安く売る以外なくなってくるので、そこをやらなくて済んでいるってのが、うちの父の何十年っていう積み重ねられた技術のおかげですね。

 

うちの商品の一つで、直売所などに置かせてもらっている、一束1,200円以上する花束があるんですけど、どこよりも配色にこだわっているんです。色目の数の話とか、花の形とかいろいろあるんですけど、特に「菊だけでどうやって華やかに見せるか?綺麗に見せるか?」にこだわってやってきました。一口に菊と言っても何種類もあって、育て方も種類によって違いがあって、それを一つの花束に美しくまとめあげるっていうのは、とんでも無く技術が必要なことなんです。あと、お盆とか彼岸とか、世の中が花を必要とする特定の時期に合わせて、必要とされる量をきちんと供給する、需要に対してキチッと物を供給できることも、磨かれた技術がないとできないことなんです。ただ、今が完成形だとは思っていないので、まだまだブラッシュアップはしていく予定です。いろいろ構想はあるんですけど、なかなか形にできていない部分もあって、まだまだ途中ですね、まだまだです。完成はないと思うんですけど、まだまだこの1,200円の花束一つとっても、やりたいことはいっぱいあって、ここまでで9年・・・、後10年ぐらいかけて、お客様の方を見ながら、商品と経営とを磨いていこうかなって思っています。